小野山公認会計士事務所

その保険本当に節税になっていますか?

保険の加入目的は様々なものがあります、法人が加入する保険の目的は主に以下の5点になるかと思います。

 

① 経営者の保障

② 緊急時の資金

③ 退職金作り

④ 事業承継・相続の準備

⑤ 節税

 

この中で節税を主たる目的として、保険を利用されることは一般的な方法として広く使われていますが、加入された保険は本当に節税になっているのでしょうか。まずは単純な例を用いて見て行くことにしましょう。

保険の検証事例

5年間払込んで6年目に解約して保険料を受取るもので、解約した時の保険の戻り(解約返戻金)は100%、実効税率(法人税・住民税・事業税を含めた税率)は36.05%(外形標準課税なし、対象復興特別法人税なしの場合)とします。

節税効果(解約年度の表示なし)

 

保険会社から提示されるシミュレーションや保険設計書等には、払込期間の説明はあっても解約時の状況は説明されません。上記のままで見ると、5年間の払込保険料50,000千円に対し、累計の節税効果は18,025千円となります。また、シミュレーションや保険設計書等には、「実質返戻率」という表記があると思いますが、計算は以下のようになっています。

実質返戻率=解約返戻金÷(支払保険料累計-節税効果累計)

上記の例でいくと実質返戻率は(50,000×100%)÷(50,000-18,025)=156.37%となり、表面的には良い節税商品のように見えます。しかしながら、解約年度まで見た場合、解約時にはいままで費用計上していたものが解約時に収益となって税負担が増加し(上記の例では節税効果はトータルで0)、節税ではなく課税の繰延にすぎないことがわかると思います。

節税効果(解約年度の表示あり)

 

このように節税目的で保険を使用する場合は、解約(満期)時の利益に役員退職慰労金等の損失をぶつけるなど「出口戦略」がなければ節税としての意味はありません。この点は会計的には至極当たり前の話ではありますが、理解されていない方もいらっしゃるのでご留意下さい。

 

また、「実質返戻率」には以下のような問題点があります。

① 適用する実効税率

以前は、41%や40%の数字を用いている場合がほとんどであったと思いますが(平成24年4月1日以降開始事業年度から実効税率は下がっています)、会社の利益水準や資本金等の金額によって会社の実効税率は異なります(参照コラム 上がる個人の税率・下がる法人の税率)。また、シミュレーションや設計書は、保険支払期間中は保険支払による費用を上回る利益が計上されていることを前提としていますので、赤字が発生すれば課税の繰延効果は得られません(赤字を繰越欠損金として繰越し、期限内に利益を計上して消すことができれば効果は得られます)。

 

② 保険料の損金割合による税効果

保険料がどれだけ費用となるかは、保険の種類や内容によって異なってきます。現在は100%損金になるものは少なく、節税目的の主要商品は50%損金のものが多くなりますが、50%損金の場合は保険料に対する節税効果はその分半減します。

 

このように節税効果は会社の状況により異なることがあるため、提案書やシミュレーションを鵜呑みにしてはいけません。また、出口戦略なき節税目的だけの保険は意味が無く、解約時に100%の返戻率がなければその分は保険会社への手数料になります。

とは言え、銀行以外への資金の積立てや、急な赤字や資金繰りの補填のためのダムとしての利用もありますので、検討される際は実質返戻率という言葉に踊らされず、単純返戻率(いくら払っていくら戻るか)や、不測の事態で予定より前倒しで解約する場合を考慮して保険の選択をされることをお勧めします。

 

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