小野山公認会計士事務所

賃貸用不動産の設備取替工事における修繕費の判定

賃貸不動産のシステムキッチン、ユニットバス、洗面化粧台などある程度年数を経過したものは、既存設備を除去して新しいものに取り替えた方が見た目も良くなり修繕コストも安くつくため、取り替えが行われますが、システムキッチン、洗面化粧台、ユニットバス等の取り替え更新をした場合の会計処理は、実務では判断が分かれ同じものでも違う処理がされていることがあると考えられます。

 

システムキッチン、ユニットバス、洗面化粧台の取替え工事について、資本的支出として資産計上すべきか修繕費になるかが争われた裁決事例がありますので、それを見ながら税務上の判断を見てみたいと思います(平成26年4月21日公表裁決事例)。

事案の賃貸不動産は6階建の建物3棟で築17年の物件で、一部の部屋についてシステムキッチン、ユニットバス、洗面化粧台の取り替えを行ったものです。納税者は、所得税法施行令181条 (資本的支出)の定義には当てはまらないこと、所得税基本通達37-13 (形式基準による修繕費の判定)を適用しても修繕費になることから、全額を修繕費として主張をしましたが、これに対して当事案では国税不服審判所は以下の判断を下しています。

 

1. 資本的支出と修繕費の区分

 

工事の内容は、単に既存の台所設備・浴室設備の部材の一部を補修・交換したものではなく、本件建物の各住宅内で物理的・機能的に一体不可分の関係にある台所部分及び浴室部分について、建築当初から設置されていた各設備及び壁・床の表面等を全面的に新しい設備等に取り替えたものであり、このことは、本件建物の各住宅を形成していた一部分の取壊し・廃棄と新設が同時に行われたとみるべきものである。
各取替費用は、それらの台所及び浴室を新設したことによって本件建物の価値を高め、又はその耐久性を増すことになると認められ、本件建物に対する資本的支出に該当するから、修繕費とされる通常の維持管理のための費用とは認められない。

 

2. 資産の区分

 

システムキッチン及びユニットバスは建物と物理的・機能的に一体不可分なものと認められることから、器具備品には該当せず建物に該当する。

 

3. 所得税基本通達37-13 (形式基準による修繕費の判定)の適用

 

全て資本的支出であり、資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合に該当しないため、適用はできない。

 

4. 解体撤去した既存の流し台および風呂に係る未償却残額の計算

 

システムキッチン及びユニットバスが建物となると、解体撤去した流し台および風呂に係る未償却残額を固定資産除去損として費用処理できます。当初の建築価額の明細があれば、そこから取得価額を割出して、未償却残高を計算することができますが、中古物件や築年数が古い物件で建築費用の明細が残っていないことは多いと思われますが、本件も建物内部の建築費用の内訳が不明であり、客観的な資料から直接算定することができない状況にありました。
そこで審判所は、建物の建築費用と総床面積を基に1㎡当たりの建築単価を算出し、それに台所部分と浴室部分の床面積を乗じた金額を、解体撤去した部分に対応する取得価額相当額とし、そこから経過年数による減価償却を減額した未償却残高を算定しました。

 

 

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