小野山公認会計士事務所

国外転出をする場合の譲渡所得等の特例(出国時課税制度)

香港やシンガポールなどキャピタルゲインに対して非課税の国がありますが、キャピタルゲインが非課税とされる国に移住することにより、日本での譲渡所得課税を回避することが可能となります。この動きを封じ込めるための税制が平成27年度税制改正により創設され、平成27年7月1日より適用が開始される予定です。

 

1. 制度の対象者

国外転出の日前10 年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年超、かつ、有価証券等(株式、国債、社債、匿名組合契約の出資持分)及びデリバティブ等の出国時の評価額の合計が100百万円以上である者

 

上記対象者が国外転出をする場合、その時点で譲渡したものとして特例により譲渡所得が課税されます。

 

2. 納税猶予制度

国外転出の日の属する年分の確定申告書に納税猶予を受けようとする旨の記載をした場合には、国外転出の日から5年を経過する日(同日前に帰国をする場合には、同日とその者の帰国の日から4月を経過する日のいずれか早い日)まで、納税が猶予される制度があります。また、納税猶予の期限は、申請により国外転出の日から10 年を経過する日までとすることができます。

納税猶予には条件があり、確定申告書の提出期限までに納税猶予分の所得税額に相当する担保を供し、かつ、納税管理人の届出をする必要があります。また年度末の有価証券等及び未決済デリバティブ取引等の所有に関する届出書を毎年提出する必要があります。

 

3. 特例による課税の取消し

国外転出後5年を経過する日までに帰国をした場合は、国外転出の時において有していた有価証券等又は未決済デリバティブ取引等で、国外転出の時以後引き続き有していたものについては、特例による課税を取り消すことができます。

 

4. 相続・贈与における適用

相続・贈与により日本の非居住者が有価証券等を取得した場合においても、日本における譲渡所得の課税機会が失われることから、相続・贈与においても適用されます。日本の非居住者が多額の有価証券等を取得した場合、贈与税・相続税に加えてキャピタルゲインがあれば所得税(譲渡所得)も課税されることになります。

含み益が多額にある株式やオーナー所有の相続税評価額が高くなっている非上場株式などは、特に問題になるため、海外移転を使った相続対策や海外居住の相続人がいる場合の相続など注意が必要になります。

 

 

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