小野山公認会計士事務所

事業所得と雑所得の区分

個人で事業を行う際、事業所得と雑所得のどちらの区分にすべきか判断に迷う場合があると思われます。事業所得であれば、給与所得等との損益通算、青色申告や税制上の優遇措置が使えるため、事業所得と雑所得のどちらになるかが重要となります。

事業所得と雑所得の違い

 

事業所得は、所得税法施行令63条12号の「対価を得て継続的に行う事業」に該当するものになりますが、事業についての明確な判断基準はなく、社会通念上事業として認められる場合が事業となります。そのため見解・判断の相違により、事業所得か雑所得かで争われている事例が多くあります。判例や国税不服審判所の裁決事例では、事業の判断について以下の項目が判断要素されており、これらの要素を総合的に勘案し、事業所得か雑所得になるかを判断することになります。

 

① 営利性・有償性の有無

② 継続性・反復性の有無

③ 自己の危険と計算における企画遂行性の有無

④ 精神的あるいは肉体的労力の程度

⑤ 人的・物的設備の有無

⑥ 職業(職歴)・社会的地位

⑦ 生活状況

⑧ 業務から相当程度の期間継続して安定した収益が得られる可能性が存するか

 

上記の項目だけではわかりづらいですが、事例を見ると事業所得と雑所得の区分の判断における考え方がわかるため、公表されている裁決事例の要旨を参考情報としてご覧下さい。

 

 

【ケース① 有価証券・商品先物取引の売買(平成元年12月25日裁決)】

 

一定の具体的取引行為が「事業所得を生ずべき事業」に該当するか否かは、結局一般社会通念に照らし当該取引が事業として行われているか否かによって決せられるべきものであるが、有価証券の売買及び商品先物取引は投機性の強いものであるから、その判断においては、単に当該取引の営利性、有償性、継続性及び反復性の有無のみならず、事業としての客観性の有無が問題とされるべきであり、この観点からは、当然にその取引のための人的・物的設備の有無、資金調達方法、取引に費やした精神的、肉体的労力の程度、その者の職歴、社会的地位などのほか、当該取引によって相当期間継続して安定した収益を得られる可能性があるかどうかについて考察せざるを得ないものというべきである。

本件において、請求人が、長期間にわたって有価証券の売買及び商品先物取引を大規模、かつ、継続的に反復して行っていたことが認められ、取引に費やした精神力、肉体的労力の程度も軽視し難いものがあったことは認められるものの、請求人は大規模な病院を経営し、その傍ら本件有価証券の売買及び商品先物取引を行っていたものであり、結局、請求人の趣味と実益を兼ねた投機により損失を被ったにすぎないから、本件有価証券の売買及び商品先物取引は、いまだ社会通念上事業と認められるに足りるものとはいえず、所得税法上の事業には該当しないものというべきであり、したがって、本件有価証券の売買及び商品先物取引から生じた損失を雑所得を生ずべき業務から生じた損失の額と認定した原処分は適法である。

 

 

【ケース② FX取引(平成22年2月16日裁決)】

 

請求人は、請求人が行った外国為替証拠金取引はその取引回数が約1,400回で、取引金額にすると130,000,000円を超える規模であり、1日に費やす時間も平均15時間に及ぶことからみて事業所得を生ずべき事業に該当する旨主張する。しかしながら、ある経済的行為が所得税法施行令第63条第12号の「対価を得て継続的に行う事業」に該当するか否かは、当該経済的行為の営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無のほかに事業としての社会的客観性の有無が問題とされるべきであり、この観点からは、当該経済的行為の種類、自己の役割、人的・物的設備の有無、資金の調達方法、費やした精神的・肉体的労力の程度、その者の職業・社会的地位などの諸点を検討する必要がある。そして、一定の経済的行為が反復・継続して行われることによって事業として社会的客観性が認められるには、相当程度安定した収益を得られる可能性がなければならない。

これを本件についてみると、① 一般に外国為替証拠金取引は投機性の高い取引であり、継続的に相当程度安定した収入が得られる可能性が乏しく、本来事業になじみがたい性格を有するものであること、② 請求人は、自らが代表取締役を務める法人2社からの役員報酬により生計を立てていること、③ 求人は、インターネット情報などを参考に取引を行っているが、外国為替証拠金取引の企画遂行に当たって相当程度の精神的・肉体的労力を要していると認められないこと、④ 外国為替証拠金取引のための積極的な資金調達が認められないこと、及び⑤ 外国為替証拠金取引を反復継続して行うための人的物的設備を有していないことが認められ、これらのことを考慮すると、請求人が行った外国為替証拠金取引は、事業として社会的客観性がいまだ認められず、「対価を得て継続的に行う事業」に該当するということはできない。

 

 

【ケース③ 金銭貸付(平成12年9月19日裁決)】

 

金銭貸付けに係る所得について、請求人は、貸金業者として登録しており、営業チラシの配布により広く一般の顧客を求めるとともに、人的・物的設備を備えて事業として金銭を貸し付けているので、事業所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件における特定の法人に対する金銭貸付行為は、[1]請求人と当該法人とが特殊の関係にあること、[2]担保を徴していない若しくは担保が形式的で実質を伴わないこと、[3]貸付金利が低すぎること、[4]請求人は、当該法人が市中から借り入れる際に、保証料を得ることなく連帯保証人となっていること、[5]当該法人は自力で市中銀行から融資を受けられる状況になかったこと等を勘案すると、社会通念に照らして営利を目的とした事業として行われているとは認められない。

また、特定の法人以外の者に対する金銭貸付行為は、[6]平成7年分は7名延べ8件の1,600千円であり、平成8年分及び平成9年分は新たな貸付けがないこと、[7]その請求人の平成8年分受取利息の総額は49,497円と少額であること、[8]請求人は、主に給与収入により生活を維持していることなどからすると、貸付口数の多寡、反復継続性等を客観的にみて、いまだ事業規模に達していないとするのが相当である。したがって、本件金銭貸付けに係る所得(損失)は、所得税法第27条に規定する事業所得には該当せず、同法第23条[利子所得]から第34条[一時所得]までに規定するいずれの所得にも該当しないことから、同法第35条に規定する雑所得に該当し、また、この雑所得の金額の計算上生ずる損失の金額については、同法第69条第1項の規定による損益通算をすることはできない。

 

 

【ケース④ 不動産の譲渡(平成元年6月23日裁決)】

 

請求人は、本件不動産は不動産賃貸業の用に供していたものであり、また、本件不動産を譲渡したのは、より条件の良い賃貸物件の取得及びローンの負担の軽減を図るためであり、その結果として売買回数が多くなり、所有期間が短くなったにすぎず、したがって、本件不動産の売買は、売買による営利を目的としたものではなく、賃貸経営を目的としたものであるから、本件不動産の譲渡による所得は譲渡所得とすべきであると主張するが、請求人は、[1]いわゆるワンルームマンションを主とする不動産の購入及び売却をして売買利益を得ており、また、受領した売却代金の大部分と多額の借入金で新規の不動産を購入するなどして、相当数の不動産の売買を繰り返していること、[2]売却した物件の所有期間は極めて短期間であること等から、営利を目的として継続的に本件不動産の譲渡を行ったものと認めるのが相当であるから、本件不動産の譲渡による所得は、所得税法第33条第2項第1号の規定により譲渡所得に該当せず、事業所得又は雑所得に該当するところ、請求人は、不動産の売買取引のあっせん及び仲介をしたことがなく、その取引の仲介を不動産業者に依頼していること、不動産取引のための雇人及び物的施設も有していないこと、別会社の代表取締役の地位にあることを総合勘案すると、請求人が行った不動産の売買は、社会通念上事業と認めるに足りないので、雑所得に該当すると解するのが相当である。

 

 

【ケース⑤ 競走馬の保有(平成13年9月14日裁決)】

 

請求人は、本件競走馬の保有に係る所得は事業所得に該当すると主張する。

しかしながら、競走馬の保有に係る業務が所得税法第27条第1項にいう事業に該当するかどうかは、単に、その営利性、有償性、継続性、反復性の有無のみならず、業務に費やした精神的・肉体的労力の程度、業務のための人的・物的設備の有無、投下資本の調達方法、その者の職業(職歴)、社会的地位、生活状況及び当該業務から相当程度の期間継続して安定した収益が得られる可能性が存するか否か等を総合的に検討し、一般社会通念に照らして判断するのが相当であるところ、平成6年から平成10年までの間における請求人の保有する本件登録馬の頭数は、登録期間が6月以上のものは1頭ないし3頭と少数である上、請求人は、本件競走馬の保有に当たり、特別な事業所や設備は設置していなく、請求人は、専属の従業員も雇用しておらず、その管理運営は専ら第三者に委託していること、請求人は、主として建設工事業の業務に基づく所得により生計を賄っていたこと、請求人の本件競走馬に係る所得は、平成10年分こそ利益を計上したが、平成5年分ないし平成9年分は専ら損失の金額を計上するのみであったこと等からすると、本件競走馬の保有は、事業所得の基因となる事業といえるための諸要素を欠くものというほかなく、いまだ所得税法施行令第63条第12号に規定する「対価を得て継続的に行う事業」とは認められないというべきである。

 

 

【ケース⑥ 船舶の貸付(平成25年3月27日裁決)】

 

請求人は、船舶の一部の貸付けによる所得も不動産所得に含まれること、○○国船籍の客船(本件船舶)の一船室の貸付け(本件業務)は、本件船舶に係る居住権の貸付けでありこれは船舶の上に存する権利の貸付けであること、本件業務に係る所得は資産性所得であること、そして、役務の提供は僅かであることなどの理由から本件業務に係る所得は不動産所得であると主張する。
しかしながら、請求人はレンタル利用者に対し単に一船室を利用させているだけではなく相当程度のサービスと一体となったクルーズを提供しているというべきであり、本件業務に係る所得がほとんど又は専ら船舶を利用に供することにより生じたものとはいえないことから、本件業務に係る所得は不動産所得には該当せず、また、本件業務は営利性・有償性及び継続性・反復性を具備しているものの、本件業務の目的は毎年の維持管理費用を少しでも回収すること、請求人は年に4回程度外国送金依頼書に署名するのみであること、本件業務に係る従業員を雇用せず事務的設備を整えていないこと、医療法人の理事長として給与等を得ており生活の資の大部分をこれらの法人から得ていたこと、そして、自己資金の範囲内で本件業務を行っていることなどから、一般社会通念に照らし、本件業務は事業とは認められず、本件業務に係る所得は雑所得に該当する。

 

【ケース⑦ 執筆及び講演等の業務から生じる所得(平成26年9月1日裁決)】

 

大学の准教授である審査請求人(以下「請求人」という。)が執筆及び講演等の業務から生じる所得を事業所得として申告したところ、原処分庁が、当該所得は雑所得に該当し、また、請求人が事業所得の金額の計算上必要経費に算入した費用のほとんどが家事関連費等に該当して必要経費に算入できないとした。

 

A 自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無
本件業務による収入は、不定期に生じてはいるものの、執筆活動に類型的に必要と考えられる取材活動や営業活動の経費が請求人の負担とされていることからすると、本件業務は自己の計算と危険において行われているというべきである。
もっとも、請求人は、本件業務に必要な取材活動や営業活動を行っていた旨答述するが、そのことを裏付ける証拠等は一切なく、これらの取材活動や営業活動の事実は認め難く、少なく
とも企画遂行性に乏しいというべきである。
また、請求人は、専門分野等に関する執筆のほかに歴史法制史関係あるいは歴史ミステリーに関係する分野の原稿を執筆した旨答述するが、それを裏付ける書面及びデータは残っておらず、作品タイトルの一覧表のようなものも保存されておらず、また、実際にこれらの内容の執筆を行ったことによる収入金額もないため、これらの内容の原稿を執筆していたとは認められない。
以上からすると、本件業務は自己の計算と危険においてされているということは できる。しかしながら、請求人が実際に本件業務に関し取材活動や営業活動を行っていたとは認め難いか、又は執筆に至った事実が認められないものであることからすれば、その企画遂行性は、仮にあったとしても乏しいものにとどまっていたと認められる。

 

B 精神的肉体的労務の投入の有無について
請求人は、a実家と Nマンションの間を毎週移動しながら、M大学等において平日に週4日程度の講義を行い、それ以外の時間に本件業務としての講演や執筆活動等を行っていることが認められることからすれば、請求人が本件業務に一定の精神的肉体的労務を投入しているとしても、限定的なものにとどまっていたと認められる。

 

C 人的・物的設備の有無について
請求人は 、パソコンやプリンター等の備品を使用して本件業務を行っていたが、それ以外の物的設備は有しておらず、また、本件業務のために使用人を雇っていない。なお、請求人は赤字のために使用人を雇えないのは普通のことである旨主張する が、ある程度の事業規模があれば赤字であっても人員を配置しなければ事業自体が遂行できないのであるから、使用人の有無を「事業」といえる程度の規模・態様においてなされた活動といえるか否かの判定要素の一つとすることは不合理ではない。

 

D 職業・経験及び社会的地位について
請求人は、平成21年ないし平成23年においてM大学で任期付の准教授として勤務し、同大学から生活を営むのに十分な給与収入を得ていた。

以上の点からすると、請求人は、本件業務に関して、自己の計算と危険において 簡易ながら一定の物的設備を整え執筆や講演等の活動を行ったと認められるものの、他方で、その企画遂行性の程度は仮にあったとしても乏しいものにとどまっており、本件業務に投入している精神的肉体的労務も限定的なものであり、さらにM大学から生活を営むのに十分な給与収入を得ていたことからすれば、本件業務は、社会通年上「事業」といえる規模・態様においてなされた活動とまではいえない。

 

 

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