小野山公認会計士事務所

老人ホーム等に入居した場合の自宅の相続評価

高齢化社会になり、病院や老人ホーム等が終の場所となることも多くなってきています。このような場合、いままで住んでいた自宅を離れて施設に入居することになりますが、残した自宅の相続時の評価において小規模宅地等の評価減が使用できるのか否かが問題となるケースがあります。

 

1. 病院のケース

 

病院はそもそも病気の治療のために入る施設であり生活の拠点とはなり得ないため、相続人が要件を満たすことができれば小規模宅地等の評価減が適用できます。

 

2. 老人ホーム等のケース

 

問題となるのは老人ホーム等に入居する場合のケースであり、「生活の拠点」となっていたかがポイントになります。現在は、被相続人が老人ホーム等に入居していた場合の当該被相続人が居住していた建物の敷地に対する小規模宅地等の適用に関して、以下に記載されている状況が客観的に認められるときに限って、小規模宅地等の特例が適用できるとされています(相続の開始の直前において認定を受けていたかにより判定)。

 

① 被相続人の身体又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため、老人ホームへ入所することとなったものと認められること。

② 被相続人がいつでも生活できるようその建物の維持管理が行われていたこと。

③ 入所後あらたにその建物を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないこと。

④ その老人ホームは、被相続人が入所するために被相続人又はその親族によって所有権が取得され、あるいは終身利用権が取得されたものでないこと。

 

平成25年度税制改正により、上記の取扱いが法制化され、老人ホーム等に入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等は、

「被相続人に介護が必要なため入所したものであること」

「当該家屋が貸付け等の用途に供されていないこと」

のいずれの要件も満たされる場合は、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして、小規模宅地等の特例の対象となります。

 

この「被相続人に介護が必要なため入所したものであること」とは、以下のことをいいます。

 

①  要介護認定又は要支援認定を受けていた被相続人が次に掲げる住居又は施設に入居又は入所していたこと。

 

イ. 認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム又は有料老人ホーム

ロ. 介護老人保健施設

ハ. サービス付き高齢者向け住宅(イに規定する有料老人ホームを除く)

 

②  障害支援区分の認定を受けていた被相続人が障害者支援施設(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第10項に規定する施設入所支援が行われるものに限る)、又は、共同生活援助を行う住居(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第21条第15項)に入所又は入居していたこと。

 

③ 地方自治体における「基本チェックリスト」に該当する第1号被保険者(平成27年4月1日以後の相続等より)

 

有料老人ホームは都道府県知事への届出が義務付けられていますが、特例の適用の対象となる有料老人ホームは届出がされている老人ホームに限定されます(租税特別措置法施行令第40条の2第2項)。平成25年10月31日時点で有料老人ホームは9,827件あり、そのうち未届状態のものは911件(9.27%)ありますのでご注意下さい。

 

 

なお、老人ホームに入所した被相続人と、入所前から同居していた親族がいた場合は問題ありませんが、入所後に新たに親族が自宅に居住した場合は、貸付け等の用に供していることになるため留意が必要です(租税特別措置法 法令解釈通達69-4-7)。

また、特別養護老人ホーム等の入所待ちが問題となっていますが、老人ホームへ入所する直前に親族等の家に居住していた場合で、生活の本拠が親族等の家にある場合は特例の適用対象外となるためこの点も留意が必要です。生活の本拠がどこにあるかは、事実認定の問題になるため一概には言えませんが、入所する時期が決まっていない状態で親族等の家にずっといる場合は問題があると言えます。

 

 

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